過去の経験が役に立つ

訪問看護師を長年続けていると、自宅療養を行う患者の暮らしを枠にはめてみることが無くなると言われています。
それは、在宅医療で実現可能なことが限りなくあることを知っているためです。
経験を通して身に付けたことは、病状が悪化していたり老老介護になるからと自宅療養を断念している人の助けとして役立てることができます。

訪問看護の仕事に慣れていないと、「認知症の人の一人暮らしは無理」「ガン末期の人は入院しなければ命が持たない」といった先入観を持って働く人が多いのは事実です。
それは経験が少ないため、あらゆるシチュエーションでこの先起こりうる変化や対応策が想像できないことが原因です。
しかし長年訪問看護師として現場経験を積み重ねると、患者が望んだことはたいてい叶えられる能力が育つと言われています。
例えば脳梗塞や脳出血の後遺症で片麻痺になり、車いす生活を余儀なくされているとします。
こうなると家族や本人はもう自宅のお風呂に入れない、旅行ができない、外出は病院に行く時だけと決めつけて生活してしまう傾向にあります。
しかし、そんなことはありません。
片麻痺でも訪問看護師のサポートや福祉用具があれば、自宅のお風呂で入浴できます。
介護タクシーを利用すると旅行も外食もでき、楽しみが広がります。
そして経験を積んでいる訪問看護師なら、車いすでも入りやすいバリアフリーのお店や飲食店も過去の経験で知っているでしょう。
病気療養中だからと言って世界を狭めるのではなく、長年の経験を活かして患者の行動範囲を広げる手助けができるのが、訪問看護師の魅力です。